理想の晩年
とくに劇的でない死を、ほぼ毎日見ている。 緩和ケア病棟で働いていたころは、いくつもの濃密な人間ドラマを間近で見た。三次救急の中核病院にいたころは、救急外来に響き渡るバイク事故の遺族の絶叫や、助からなかったくも膜下出血の患者を囲むすすり泣きを聞いた。それを思うと、小ぎれいな姥捨山のような療養病院での日々はずっと静かに感じられる。 もちろん、そこに人間ドラマは確実にある。「お母様との残された時間はそう長くない」と患者の家族へ伝えることに慣れるということはない。母との別れも父との別れも一生に一回しかない。みんな、取り乱しこそしないものの涙ぐみ、ハンカチを握りしめる。 当院に入院している
日経メディカル
2026年10月15日 15:00